再びSさんの野菜
いつも野菜をいただいているSさんが久しぶりに訪ねて来てくれた。
「いただいた野菜のお礼を言いたいのに・・・・久しぶりね」
「調子が悪くてね」
こんな会話の後、やっぱり野菜の話になった。
「ニガウリが黄色くなっちゃったんだ」
「あの三角の尖ってるのは何て言ったっけ」
「オクラよ」
「トウガラシは赤くなっちゃったよ」
「そうかあ、オクラは大きくなったらダメなんだねえ」
「じゃあ、今、見てくるよ。あったら持って来るからね」
「ビニール袋があるかい?」
そういうとSさんは小雨の中をオートバイに乗って消えた。
それから30分が過ぎてSさんが戻ってきた。
ニガウリ、オクラ、トウガラシ、大きいカボチャが2つ。
雨でビショビショに濡れた野菜たち。
「みんな美味しそうだわ」
「すぐに料理できるわよ」
「食べて行ってよ」
「オレ、ニガウリもオクラも食べたことないの。食わず嫌っていうか、ホントに嫌いなんだ」
「カボチャは?」
「もう、ずっと食べてないよ。嫌いなんだ」
「・・・・・・」
誰のために、何のために作っているのよ?ってSさんに聞きたかったけど・・・・
こんなこと、聞けないよね。